一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
そう思うくらい、雅臣の手はこわばって震えていた。それでも、彼は私の手には爪を立てないでいてくれる。
「思いやりをもち、相手に尽くす。依子そのものだ」
「……は?」
眉をひそめる息子をまっすぐ見て、二條公親はつぶやく。
「臣というのは、依子のことだ。晴臣、雅臣。おまえたちの名前には、母親への敬意が込められている」
雅臣の手から、少しずつ力が抜けていくのがわかった。
「なん……だと」
「私はあれに感謝している。お前たちを残してくれたこと、私を奮い立たせてくれたこと。自分のことよりも、私たちの将来のことばかり気にかけていた」
立ち尽くしている雅臣に静かな目を向けて、厳格なオーラに包まれた二條家の当主はつぶやいた。
「依子は、私の最愛の妻だった」
風が吹いて、緑の葉が舞う。