一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 そう思うくらい、雅臣の手はこわばって震えていた。それでも、彼は私の手には爪を立てないでいてくれる。

「思いやりをもち、相手に尽くす。依子そのものだ」

「……は?」

 眉をひそめる息子をまっすぐ見て、二條公親はつぶやく。

「臣というのは、依子のことだ。晴臣、雅臣。おまえたちの名前には、母親への敬意が込められている」

 雅臣の手から、少しずつ力が抜けていくのがわかった。

「なん……だと」

「私はあれに感謝している。お前たちを残してくれたこと、私を奮い立たせてくれたこと。自分のことよりも、私たちの将来のことばかり気にかけていた」

 立ち尽くしている雅臣に静かな目を向けて、厳格なオーラに包まれた二條家の当主はつぶやいた。

「依子は、私の最愛の妻だった」

 風が吹いて、緑の葉が舞う。

< 273 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop