一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
さわさわと柔らかい葉擦れの音を聞きながら、二條公親はハナミズキの樹をやさしい目で見上げる。
そして彼は、立ち尽くす息子の横を通り過ぎ、ゆっくりと通路を進んでいった。
ずっと向こう、緑に飲みこまれかけた石段の手前で、スーツ姿の優秀な執事が雇い主がやってくるのを待っている。
二條家のとりまとめ役である坂城さんは、もしかするとすべてを知っていたのかもしれない。
自分が仕える二條家当主の気持ちも、その息子の感情も、すべて――。
たどりついた二條公親をエスコートするように石段脇に寄った坂城さんは、振り返って私たちを見た。
そして、敬礼するように背筋をまっすぐ伸ばし、深く深く頭を垂れた。