一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
幸いかかとの高い靴は履いてこなかったけれど、バックストラップのサンダルでここを歩くのは心もとない。ためらっている私に気づき、雅臣が「ほら」と手を差し出した。
大きな手に、迷わずつかまる。肌になじむ体温に勇気づけられ、私は足を踏み出す。
ふと雅臣が笑みを漏らした。
「懐かしいな。前にもここで、小さな子どもの手を引いてやったことがある」
太陽光が届かない鬱蒼とした森の奥を見やり「といっても、俺も子どもだったけどな」と付け足す。
いつ途切れてもおかしくないほど細く頼りない道をためらうことなく進みながら、雅臣はどこか楽しそうに続けた。
「ずいぶん昔の話だ。たしか女の子だったか、迷子になってたようでわんわん泣いてな。なだめるのが大変だった」
穏やかに笑う雅臣を見ながら、なんだか胸が温かくなる。