一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
やっぱり雅臣は、子どもの頃から優しかったんだな。そう思いながら、自分にも似たような経験があることを思い出した。
「そういえば、私も――」
「着いたぞ」
ふいに森が拓けて、視界に古びた建物が映る。
おとぎ話に出てくるような三角屋根の、シンプルな造りの倉庫だった。瓦の屋根に、壁には横長の木板が縦に重なるように取り付けられていてログハウス風になっている。
「ここって……」
記憶の奥底から、なにかが浮上しようとしていた。
私は、この場所を知っている。
来たことがある。
「ここもいい加減、取り壊さないといけないな」
朽ちかけた建物は入り口のドアが生い茂った草に埋もれそうになっている。それらをかき分け雅臣がドアノブに手を掛けると、扉は軋んだ音を立てて開いた。
「……鍵が壊されてるな。誰かに使われてた可能性がある。さすがに、中に入るのはやめておくか」