一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
私のぶんの紅茶を淹れると、楓さんは立ち上がった。
「それじゃあ、『ばあや』はおふたりのためにお部屋を磨いてきますかねえ」
わざとらしく「やれやれ」と廊下に消えていく彼女を見送ってから、私はなんでもないふうを装って雅臣のとなりに腰を下ろした。けれどすぐに鋭い声が飛んでくる。
「なにを赤くなってる」
「べつに、赤くなってなんか……」
耳まで熱いことを自覚しながら、紅茶を口に運んだ。芳醇な香りが鼻に抜けていくのを感じながら、頭の中では何度も同じ言葉が繰り返されている。
――愛は最初から特別だ。
雅臣はいつも、なにげないときに私をドキッとさせるようなことを言う。
それでいて本人は無自覚なのだから始末が悪い。なんの前触れもなく、人目すらはばからずに甘さを垂れ流されたら、どう反応すればいいのかわからない。