一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「なにを謝るの」
「あなたに、大変な思いばかりさせて」
弱々しい微笑みに、とっさに口にする。
「全然! 私今、すごく充実してるの。会社も楽しいし……そうそう、仕事を教えてくれる人がとってもいい人でね」
「それ、男の人?」
「そうだけど……」
ふいに口を挟んだ母は、うかがうように私を見上げた。
「愛には、お付き合いしてる人はいないの?」
突然頭の中に弾けたのは、豪勢な調度品で飾られた部屋だ。その真ん中で悠然と椅子に腰かけている、傲慢な態度の彼――。
『返事は一週間だけ待ってやる』
最後に放たれた低い声がよみがえる。
「い、いるよ、付き合ってる人。結婚の話も出てるの」
不自然に見えないようにめいっぱい微笑んでみせると、母の顔がパッと輝いた。