一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「あら、そうなの? よかった。愛にもちゃんといい人ができたのね」
さっきまでとは打って変わって母はニコニコと濁りのない笑みを浮かべる。一瞬こわばった体から、ゆっくり力が抜けていった。
よかった。お母さんが安心してくれるなら、私はどんなウソでも呑み込める。
「私のことで苦労をかけたから、あなたには幸せになってもらいたいのよ」
「なに言ってるの。私は今も充分幸せよ」
いたずらっぽく笑ってみせながら、頭には別の光景がよぎった。
さっきベッド脇の小さな引き出しから靴下を取り出したとき、隅っこに隠すように口紅がしまわれていた。顔色の悪さをごまかすために色を差して、母は私を安心させようとしているのだ。