一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
母は宝石箱を開けた小さな女の子みたいにきらきらした顔で、手もとにはないその絵をよく懐かしんだ。私と生きていくためにあっさり手放した、宝物だったに違いないその絵のことを。
午後四時四十分、終業時刻が近づいてくるとついぼんやり父や母のことを考えてしまう。数字を書きこんでいたメモ帳に視線を落とすと『二條物産ロジスティクス』の社名ロゴが目に入った。
絵を返してもらうため、三年前から数回にわたってあの巨大な二條家の門を叩いたけれど、何度行っても門前払いだった。
だから私は二條グループの会社を派遣先に選んだのだ。二條家の誰かと直接話をする機会を得られるかもしれないと、希望を抱いて。