一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 定員六名の会議室には窓もないけれど、電気をつけなくてもすりガラスから漏れる光で視界がきいた。部屋の隅で立ち尽くしていると、ドアの向こうが徐々に騒がしくなっていく。

「ああ常務! こんなところまでわざわざ」

 清水マネージャーの声が聞こえ、その後に聞き取れないような低い声や足音が響き、やがてフロアは静まった。腕時計に目を落としてため息をこぼす。

「今日はこのまま帰宅かな」

 しばらく息をひそめて様子をうかがい、もう一度外に人の気配がないことを確認してからドアを開く。

 資料や伝票ファイルが積み重なった机が静かに身を寄せ合うだけの、いつもと同じがらんとしたフロアに息をついた。扉一枚隔てた応接室からは男性社員たちの低い声が聞こえてくる。

 壁時計に目をやると五時五分。

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