一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る



 五日前、二條家の屋敷に忍び込んだとき、あの人は私に言った。右か左、どちらか一方に進めと。

 でも提示された道は片方が行き止まりになっていて、実質一本道になっていた。つまり、私に与えられた選択肢は、進むか進まないかのどちらかだけ。

『一週間たったら返事をしに来い。今度は塀を越えるんじゃなく、玄関からな』

 遠くの空から注ぐ太陽が、歩道に長い影をつくっている。

 バス停のベンチにぼんやり座りながら皮肉っぽく笑っていた顔を思い出していると、目の前に黒塗りの車が停まった。スモークフィルムの窓が音もなく下がり、ついさっき応接室で顔を合わせたばかりの彼が目も合わさずに言う。

「乗れ」

 断ることもできたけれど、私は黙って車に乗りこんだ。

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