一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 革のシートが驚くほど柔らかい。後部座席とは思えないくらい広々としているうえに、前の座席のヘッドクッションがディスプレイになっていた。ただの会社役員の車ではないのだと、内装が語っているみたいだ。

「母親の見舞いに行くんだろ? 送ってやろう」

「どうして、そのことを」

 隣を見ると、彼は「ふん」と鼻を鳴らし、つまらなそうにつぶやいた。

「俺を誰だと思ってる」

 そう、この人は私の想像もつかないような暮らしをしている二條家の御曹司だ。『瀬戸口アキラ』という父の名前を知られているのだから、そこから辿って私や母のことを調べるなんて簡単だろう。

 車に乗っていることすら忘れてしまうような静かな空間で、二條雅臣はふと笑った。

「それにしても、まさかうちで働いてたとはな。そうまでして二條に近づきたかったか」

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