一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
黙っていると、伸びてきた指に顎を掴まれ振り向かされた。さげすむような流し目は、どこか楽しそうにも見える。
「だがあんな末端の事業所に紛れこんだところで、深部に近づけるわけがないだろう。相当切羽詰まってたんだな」
二條家当主の息子だというこの人も、二條グループのどこかの会社で働いているのだろうとは思っていた。でもまさか、自分が派遣されている会社の役員だったなんて。
事務所で日々伝票やパソコンと向き合っている私は、本社とやり取りする機会なんて得られない。彼が言う通り、二條の名を冠する会社で働いていても、派遣社員じゃ重役と顔を合わせるのは難しい。冷静に考えればわかることだ。だけど、お金も権力もない私に、ほかにどんな手段があったというのだろう。