一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
顎を掴む彼の指から逃れるように、真っ暗なままのディスプレイに目をやる。
「そんなことを言うために、わざわざ末端に来たんですか?」
慌てた様子だった清水マネージャーを思い出していると、傲岸不遜な常務取締役は皮肉っぽく口角を上げた。
「まさか。そんなに暇じゃない。末端とはいえ物流は経済の要なんでね。まあつまり、おまえが理解しえない道理で世の中は回ってるんだ」
私から手を離すと、アームレストに肘を置いて頬杖をついた。はっきりと切れ込みの入った二重の目で冷たく私を見る。
「それで、答えは出たのか?」
車内は私にとっては十分すぎるくらい広々としているけれど、体の大きな彼が脚を組むと靴先が前の座席に届く。磨き抜かれて光沢を放つ靴は、間違いなく私の月収よりも高いだろう。下手をしたら、年収よりも。