一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 私が首をひねると、彼は呆れたように続けた。

「買い物に行くなり趣味に没頭するなり、いろいろあるだろ。ああ、三階のシアタールームも自由に使っていいぞ」

 言われた言葉があまりピンとこなくて、遠くの天井を見つめてから目を閉じた。

 そういえば、私には趣味らしい趣味がない。

 これまでずっと家事をやって、働いて、病院に行っての繰り返しだった。生きるだけで精いっぱいで、友達と遊んだ記憶は小学生の頃を最後に途切れている。自分の心を満たすためになにかをやったことなんて、あったかな。

 黙りこんでいると、隣から「はあ」と大きなため息が聞こえた。

「おまえはなにが好きなんだ? これまでやりたくてもできなかったことだってあるだろ」

「食べることは好きです。前にテレビで見たことのあるグランド・フロンティアホテルのエッグベネディクトは食べてみたいなぁ」

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