一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 私は今、平日の午前と午後のあわせて三時間、坂城さんのマナー講習を受けている。

 お辞儀の仕方から食事の仕方、車の乗り方まで、日常における最低限のマナーを身に着けないと彼の家族に会わせてもらえないのだ。

 この家に来た日に婚姻届けに記入も捺印も済ませたのに、二條家の嫁としてふさわしい所作を体得してご両親に挨拶を済ませないと、役所に出すことができない。

 ぎゅっと唇を噛む。

 間に合うの……?

 うつむいていると、ふと大きな手が触れた。私の頭をポンポンと叩いて、二條雅臣はつまらなそうに口にする。

「思い詰めるな。手配はしてある。お前の準備さえ整えばすぐにでも動ける」

 目が合って、どきりとした。

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