一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
いつも相手を見定めるように鋭く光っている瞳に、優しい色が灯っているように見える。
表情は笑っていないし、というかそもそも楽しそうに笑ったところを見たことがないし、声だって低くて冷たい。それなのに、私の胸には温かななにかが滲んでいく。まるで乾いた地表にやわらかな湯が湧きだしたみたいに。
不思議に思ってから、頭に触れる手に思い至った。男の人に撫でられるなんて、子どものとき以来だ。
なんだか、安心する――。
気持ちがほどけそうになって、はっとした。慌てて顔を伏せ、気づかれないように息をつく。
この人は私の弱みに付けこんで契約結婚を持ちかけてきた傲慢な人間だ。女好きで偉そうで、お金や権力にモノを言わせるような。そんな相手にほだされてどうする。
両手を握り締めていると、隣の彼が腕時計に目を落とした。
「そろそろ見舞いに行く時間じゃないのか」