一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「あ、そうでした!」
弾かれるように立ち上がった私を見て、この屋敷の主人はぽつりと言う。
「ついでだ。乗っていけ」
「え……?」
「俺はまだ仕事が残ってるんだよ」
ジャケットの内ポケットからスマホを取り出してどこかへ電話をかけながら、「早く支度しろ」と顎をしゃくる。
「で、でも」
「病院手前の駅で降ろしてやる。それなら目立たないだろ」
そこまで言ってから、電話相手とつながったのか話を一方的に終わらせてしまった。
むうっと唇を突き出す。
なんだか思考を先回りされている気がする。私の考えていることなんてお見通しということだろうか。
御曹司という人種の底の知れなさに眉をひそめながら、ドアに向かって歩き出す。
とりあえず、支度をしないと。