一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
私の荷物が運び込まれた部屋は二階にある。対して二條雅臣の寝室は三階だ。洗面所やバスルームはそれぞれの部屋に備えつけられているから、同居といってもあまり実感は湧かなかった。顔を合わせるのは主に彼の出勤前と、夕食を一緒に取るときくらいだ。
キッチン脇を通りかかったとき、楓さんが通話を終えた二條雅臣に声をかけた。
「雅臣様。今日のお夕食はいかがされますか?」
「愛が帰るころには俺も戻る。いつも通りにしてくれ」
「はい。かしこまりました」
ソファから立ち上がった彼が、腕時計を気にしながらこちらに歩いてくる。すれ違いざま私を一瞥し「表にいるから、急げよ」と言ってさっさと廊下に出てしまった。
「強引すぎる」
開きっぱなしのドアを見つめてため息をこぼすと、洗い物をしながら楓さんがくすくす笑った。
「かわいい人ですよね」
「どこがですか⁉」
思いきり振り返ると、彼女は女神みたいに優しい微笑みを浮かべた。
「愛さんにも、今にわかりますよ」