一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る

 冗談半分にサマ付けで呼ぶと、彼は「ふん」と鼻を鳴らして目を逸らしてしまった。

 なるほど、傲慢なだけだと思っていた御曹司様にも、ちょっとはかわいいところがあるのかもしれない。

 朝食を済ませると、十時からのマナー講座が始まるまで時間が余る。今日はなにをして過ごそうかと考えていたら、ソファに移動していた雅臣が声を張った。

「愛、こっちへ来てみろ」

「なんですか?」

 柱を回りこんでリビングに向かうと、フローリングにイーゼルが置かれていた。木枠に布を張った小さめのキャンバスと筆や刷毛など、絵の具のセットまで用意されている。新品らしくパッケージに包まれたそれらを見下ろして、ぽかんとした。

「これは?」

「絵が好きなんだろう。好きなように使え」

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