一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
唖然としてしまった。ソファで長い脚を組んでいる彼は、なんとなく得意そうな顔をしている。もしかして、私が好きだと言ったからわざわざ用意したのだろうか。
困惑しながら、まだ何色にも染まっていないフラット型の硬毛筆を一本手に取った。太いものから細いものまで、ご丁寧に二本ずつ用意されている。
「好きとは言いましたけど、描くとはひと言も……。しかもコレ、油彩用でしょ? 私油絵なんてやったことないです」
「なに、そうなのか」
驚いたように凛々しい眉を持ち上げると、彼はテーブルに目を落とす。
「じゃあコレならどうだ? ちょっとなにか描いてみろ」
そう言って差し出したのは、厚い画用紙が綴じられたスケッチブックだ。
「描いてみろって言われても」
一緒に渡された4Bの鉛筆は丁寧に削られていて、脆そうな芯がきっちり尖っている。