一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「ほう。見せてみろ」
私が渡したスケッチブックを「どれどれ」と覗きこみ、彼は動きを止めた。
「これは……」
端正な顔をより知的に見せるメガネの奥で、深い茶色の瞳が大きく広がる。
「石、か?」
「ネコです!」
「なんだと? 道端に転がってる石じゃないのか」
「耳のある石がありますか⁉」
私に目を向ける彼が、見たことのない表情を浮かべる。呆れているような、憐れんでいるような……。
「ち、父親が画家だからって、その子どもまで絵がうまいとは限らないでしょ!」
というか、私はうまく描けたつもりでいたのに!
信じられないような顔をしている彼に、持っていた鉛筆を押しつける。
「それなら、あなたも描いてみてください! 人の絵を批評できるくらいだから、さぞかし絵心があるんでしょう」