一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
「ふっ」と鼻で笑って彼は鉛筆を受け取った。厚紙のページをめくり、シャッシャと軽快に黒い線を走らせていく。ためらいのない鉛筆さばきに鼓動が速くなる。
もしかして、本当に上手なの?
「できたぞ」
得意げにスケッチブックを渡されて、おそるおそる覗きこんだ。そこに描かれていたのは――。
「なんですか、これ」
「なにって、ネコだ」
「どうして足が五本あるんですか?」
「バカめ、どこに目をつけてる。これはどう見ても尻尾だろうが!」
「尻尾……??」
「なんだその目は」
身を乗り出してきた彼に、がしりと顔面を掴まれた。片手で私の両方のこめかみを押さえられるくらい、雅臣の手は大きい。外そうと手首を掴み返したけれど、力が強くてびくともしなかった。じたばたもがきながら、口で反撃する。