一億円の契約妻は冷徹御曹司の愛を知る
ため息がこぼれそうになった。わかっていたことなのに、改めて感覚の違いを感じる。
彼らは、私が否が応でも費やさないといけない時間と労力を、お金で買えるのだ。とても簡単に、あっさりと。
「あら、おいしい」
「本当?」
「ええ、口の中でとろけるわ。こんなのはじめて食べた。プリンも進化するのねえ」
ふわりと微笑む母のうれしそうな顔は、久しぶりに見る。ふっと体のこわばりが取れ、そのまま気持ちまでほどけそうになって慌てて引き締めた。力を抜いてしまうと、涙がこぼれそうな気がした。
「ホントだ。すごくおいしい」
プリンにスプーンを差しこんでもう一口食べようとしたとき、半分閉めたカーテンの向こうから男性の声がした。
「失礼。こちらにいらっしゃるのは、瀬戸口恵美さんですか」