負け犬の傷に、キス



薫の倒した男をロープでぐるぐる巻きにし、俺は小部屋を下っ端に任せ、大部屋に移った。




「……どうなってんだよ」




おかしい。


明らかにここだけおかしい!




標的と同じくらい、下っ端も負傷して倒れていた。


大部屋に仕かけた緑色のネットには、敵が3人捕らわれていた。ネットの中で仲間同士でやり合ってる。


チカチカ、設置しておいた懐中電灯のひとつが切れかけ、点滅してる。




……ただ、おかしいのはそこじゃなくて。




「父さん! 父さ……っ、許して! 赦してよ!!」


「ちが、お、俺は父さんじゃ……」


「なんで……う、ウソつくなよ! 父さんだろ!? な!?」




なんだ、あの光景は。



下っ端にしがみつく赤髪の男。

父さん、父さん、と何度も泣き叫んでる。



それだけじゃない。



「何しやがったお前!!」

「てめぇが先に殺ったんだろうが!?」



トラップにやられたわけでもなく、なぜか標的同士で殴り合い。




「あ、鼻血」


「何なんだよこいつ……」

「もう気絶してもおかしくねぇのに……」


「ふっ、あはは! ねぇ、もっと! もっと血を見せてくれよーお!!」




下っ端ふたりにはさまれたマゾな男は、虐げられることを求めてる。


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