負け犬の傷に、キス



この大部屋はどこもかしこも異常。




「仲間うちのケンカは自滅するだろうから放っておくとして……」




問題は、赤髪の男とマゾな男。

どう対処すべきなんだろう。




「あぁ……なんだぁ」


「いっ、ぅあ!?」


「父さんじゃないのか」




血しぶきが舞った。



赤髪の男のナイフが、下っ端の背中を切り裂いていた。

白いシャツが(アカ)く染まる。



考えるよゆうすら与えてはくれない。




「父さんじゃないなら要らないよ」




下っ端にまたがり、再びナイフを振り上げる。


その右腕がピタリと止まった。




「要らねぇのはコレだろ」




柏だ!

柏が止めたんだ!



赤髪の男の背後を取った柏が、ナイフを持ってるほうの手首を力強くつかんでいた。


骨の折れる音が反響する。




「うがあああっ!!」


「これでナイフは使えねぇな?」




落下したナイフの刃を、血のついたスニーカーが砕いた。


ギョロリと瞳孔の開いた男の眼が、柏を射抜く。




「あ……あ、くっ、フフ」


「あ? なんだ?」


「みーつけた」




立ち上がった赤髪の男は、突然、左手を柏の顔へ伸ばした。

柏は背を反らしてかわす。



「いひひっ」



伸ばされた左手には、灰色のニット帽。


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