負け犬の傷に、キス



次は持ち手の部分を天井に向かって投げる。

天井に平行にはめられた、鉄筋の上を越えたロープの先が、地面のほうに垂れ下がる。



このロープの先を引っ張り上げれば……



「わああっ!?」



男の体が浮いた。

うまくいった!


ロープの先を壁に埋め込まれた釘に巻きつければいっちょあがり。




「何これ! ちょっとー!」


「これで我慢して……」


「放置プレイってやつ? これはこれで……えへへぇ……」




あの男にとって我慢はごほうびらしい。

異様にポジティブだな。




「あ、あの……」

「総長……」


「ふたりとも無事?」


「う、うっす」

「助かりました! あざっす!」




下っ端ふたりに頭を下げられあたふたしてしまう。


いやいや助けるのは当たり前だよ!

仲間じゃん! 俺、総長じゃん!


お礼なんて……いいのに。




「ふ、ふたりはあの自滅し合ってるヤツらと、柏が戦ってるヤツが片づいたら、拘束しておいてほしいんだ。あと負傷者の手当てもお願い」




ロープを数本渡し、柏のほうを一瞥してみる。




「ヒュッ、ぐぁ」


「この程度でくたばんじゃねぇぞ?」




赤髪の男が血反吐を漏らしても

べちょべちょに泣き崩れても


耳心地の悪い音は、絶え間なく。




「ヒトのもん奪ったらどーなるか、たっぷり教えてやんよ」




敵ってどっちだっけ、と疑いたくなるくらいの悪人面。



周りが見えなくなっていたらストップかけようと思ってたけど、その心配はいらないみたいだね。


怖い顔してるし、怖いこと言ってるわりには、手加減してあげてる。


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