負け犬の傷に、キス
ちょっと前まで本能のままに殺ってたのにね。
いつの間に成長を?
薫に忠告でもされた?
……たぶん後者だろうな。
「柏ー、俺1階行くよ」
「おう、好きにしろ」
うん、やっぱり。
俺の声もちゃんと届いてる。
安心して先に行ける。
これけっこう順調なんじゃない?
このままいけば意外と早くたまり場に帰れる。
軽い足取りで1階に下りた。
足が一気に重くなる。
そんな簡単にいかないってわかってた。わかってたよ。
部屋の区切りのない1階には、まだまだ標的がうごめいていた。
一番スペースが広いのにそう感じさせない。
「敵多すぎ……」
博くんとユキ、それから薫と下っ端たちも駆けつけてこの現状か。
標的はざっと30以上。
伸びてるヤツを入れると初めは50近くいたようだ。
「どんだけ同志つのったんだよ……」
元凶め! “薬”を売りすぎだよ! そもそも売るなよ!
「鬼さん、こちらですよ」
不良5人を引きつけ、博くんが角に誘う。
不良5人が布に覆われた場所を踏むと身が沈んだ。
「ワナにかかるのがお上手ですね」
あれが1階のトラップ。
もろい床を壊したところに黒い布で覆っただけの即席落とし穴。
まさかハマるバカがいたとは。