負け犬の傷に、キス






ひとりでなんとかしようとしていた

あのころよりも


わたしもかっこよくなれてるのかな。





朝の情報番組の音声をBGMに、空っぽのお弁当箱におかずを詰めていく。


焼き色のついたたまご焼き。タコさんとカニさんのウインナー。かぼちゃの煮つけとほうれん草のごまあえに、ポテトサラダ。ご飯は鶏そぼろ。




「姉ちゃん、どう?」


「うん、いい感じ」




オッケーサインを出すと、宵がお弁当の最後のスペースにミニサイズのハンバーグを入れてくれた。



味も色味もばっちり!

うーん、でも……明日からとうぶんわたしと宵の分は作らないからって頑張りすぎたかな。



まあいっか。

お弁当箱のふたを閉めると、両親があいさつしながらリビングダイニングに入ってくる。




「母さん寝不足?」


「うんちょっとねぇ……。最近仕事が忙しくて」




心配する宵に「大丈夫よ」と微笑み、お母さんはコーヒーを淹れる。

その隣で、お父さんがアールグレイを準備していた。



家族が希勇くんを認めて以来、今まではわたしや宵に任せていたことを両親がするようになった。


仕事で疲れてるんだから休んでて、と気遣っても感謝されるだけ。



まだちょっと慣れないけど、ふたりがそれでいいなら、わたしと宵もそれ以上何も言わない。


その変化を受け入れる。



ぽちゃん、とコーヒーに角砂糖がひとつ溶けていく。


アールグレイはアレンジなし。

かんきつ系の香りがする。


< 261 / 325 >

この作品をシェア

pagetop