負け犬の傷に、キス


ダイニングテーブルについたお母さんとお父さんは、そろってあくびをした。宵にも伝染する。みんな眠たそう。



わたしと宵でテーブルに朝食を準備している間に、お父さんは新聞を広げた。


ページをめくると『薬物使用者大量逮捕』の見出しが。


小さく写真も載っていた。

この街のはずれにある廃ビルだ。



そういえば希勇くんたちが戦ったあと、警察を呼んだんだっけ。

全国紙の新聞に載るくらいすごいことをしてたんだな……。




「お手柄だな」




お父さんは一瞬わたしを見た。


その記事に希勇くんが関わってることは話してない。

それなのに気づいて……?




「お手柄だけど……こっちはてんてこまいよ」




お母さんの目の下には濃いクマができていた。

無糖じゃないコーヒーで眠気を吹き飛ばす。



カレンダーの昨日の日付には赤い丸印。


希勇くんたちが戦った次の日
両親は夜遅くまで病院で戦っていたんだろうな。


特にお母さんは精神科医だから大変だったかもしれない。



今日は月曜日。


しっかり休めていない両親に1週間の疲れがどっと出てもおかしくない。




「お疲れさま。はい、これ!」


「ふたりにデザート作ったの」




ダイニングテーブルに最後のお皿を並べる。

小さなガラスの器に淡い黄色がきれいに輝く。



実は昨夜、宵と準備していた。


お母さんとお父さんのためのゼリー。

ひんやり冷たくて食べやすいと思うよ。




「りんごゼリー? いつの間に……」


「ありがとう。おいしくいただくわね」




喜んでくれた! サプライズ成功だ!

宵とニッと笑い合い、家族みんなで「いただきます」と手を合わせた。



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