負け犬の傷に、キス






「それではよい夏休みを」




担任の先生の一言で教室は明るくなる。



1学期最後のホームルームが終わった。

明日からは夏休み。


希勇くんたちの通う西校は、先週の金曜日が終業式だったらしい。




「夏休み中もさ、遊ぶんじゃない?」




先生がいなくなったとたん、コソコソとした小声がわたしを射抜いた。


カバンに教科書を詰めていた手が止まる。



言葉だけなら他愛ないセリフ。

だけどどうしてだろうね。


言葉通りの意味じゃないこと、すぐに気づいた。


気づけてしまった。




「そうなんじゃない?」

「違うでしょ。遊ばれるんでしょ」

「サボってたこともあったよね」

「よくあんなヤツらといれるよな」

「レベルが違うのにね」

「俺だったらムリだわ。同等と思われたくねぇし」

「ふつうに怖いしね」




人を悪く言うみんなのほうが怖い顔をしてる。

そのことにみんなは気づいてる?



白い目を向けられても、痛くも怖くもなくなった。


ただ悲しくて、悔しい。




今までわたしなりになんとかしようと立ち向かってきた。



うわさの根源を聞いてみたけど、答えてくれる人は少なくてはっきりとは突き止められなかった。


感情的に「違う!」と反論したりもしたけど、嘲笑われてエスカレートするだけだった。


< 263 / 325 >

この作品をシェア

pagetop