負け犬の傷に、キス
*
「それではよい夏休みを」
担任の先生の一言で教室は明るくなる。
1学期最後のホームルームが終わった。
明日からは夏休み。
希勇くんたちの通う西校は、先週の金曜日が終業式だったらしい。
「夏休み中もさ、遊ぶんじゃない?」
先生がいなくなったとたん、コソコソとした小声がわたしを射抜いた。
カバンに教科書を詰めていた手が止まる。
言葉だけなら他愛ないセリフ。
だけどどうしてだろうね。
言葉通りの意味じゃないこと、すぐに気づいた。
気づけてしまった。
「そうなんじゃない?」
「違うでしょ。遊ばれるんでしょ」
「サボってたこともあったよね」
「よくあんなヤツらといれるよな」
「レベルが違うのにね」
「俺だったらムリだわ。同等と思われたくねぇし」
「ふつうに怖いしね」
人を悪く言うみんなのほうが怖い顔をしてる。
そのことにみんなは気づいてる?
白い目を向けられても、痛くも怖くもなくなった。
ただ悲しくて、悔しい。
今までわたしなりになんとかしようと立ち向かってきた。
うわさの根源を聞いてみたけど、答えてくれる人は少なくてはっきりとは突き止められなかった。
感情的に「違う!」と反論したりもしたけど、嘲笑われてエスカレートするだけだった。