負け犬の傷に、キス
「この白薔薇学園に言葉で人を傷つける人がいるように、どこにだって怖い人と優しい人はいるんだよ」
「……っ」
クラスメイトの赤い形相が引くつく。
怒ってるのか恥じてるのか読めない。
ごめんね。わざと指摘した。
頭がよくても心が悪かったら、わたしは、怖いよ。
「すぐにじゃなくていいから、わかってほしい……です」
悲しかった。悔しかった。
あの白い目はもうない。
ぎこちなくても笑顔を作れた。
「そ、それじゃあ……よい夏休みを!」
先生の言葉を真似して踵を返した。
気持ちがたかぶっていく。
教室を出てから自然と早歩きになる。
全身が、カバンが、軽い。
お弁当が空っぽになったからじゃない。
胃の中で鶏そぼろが消化されていく。
言えた。
ずっと言いたかったこと全部言えた!
わたしも頑張れた!
早く希勇くんに伝えたい。
最後まで立ち向かえたんだよ。
希勇くんがいてくれたからだよ。
早く、会いたいよ。
……でも、その前に。
――ガラッ!
「辻先生!」
「こんにちは津上さん。ふふ、元気いいのね」
保健室を訪れると、辻先生は「待っていたわ」と出迎えてくれた。
いつもの柔らかな笑顔に、思わず全身の力が抜ける。