ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
『コンコン』
病室の扉を海が開けるとそこには車いすに座った椿が待っていた。
いつも着ているパジャマから出かける用の服に着替えた椿。うっすらと化粧をしていて、右手のつかえない椿がどれだけの時間をかけて支度をしたのか、海には想像もつかなかった。

椿の気分転換と、大切な話をしたくて外出を提案した海は少し椿にとって負担が大きかったかもしれないと思った。

「おはよう」
「おはようございます」
「敬語は禁止」
「・・・はい」
どこかぎこちない二人。
海は椿の緊張をほぐせるように微笑みながら椿のそばへ近付いた。
「行きますか。」
「・・・うん・・・」
海が椿の車いすを押して病院から出る。
椿は時々検査で病院の中を車いすで移動したり、海が来たときに大きな窓のあるロビーへ行く程度で、病室からはほとんど出ていなかった。
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