ワケあり花屋(店長)とコミュ障女子の恋
海は毎月、香菜の月命日に花を持って墓地へ行っている。
その季節ごとの香菜が好きだった花を花束にして・・・。

せめてもの償いだという気持ちで墓前に手向ける。

香菜との思い出が多すぎて、過去から抜け出せなくなりそうなことがある。

「店長、俺配達行ってきます。」
「了解」
凌駕に声をかけられて、海は空から視線を凌駕に移した。

「店長。」
「ん?」
「・・・なんでもありません」
「・・・おう」
凌駕は何度も言おうとして飲み込んでいる言葉がある。

もう苦しむのはやめてほしい。前を向いてほしい。姉の死を乗り越えて、ちゃんと生きてほしい・・・。

でも、海の気持ちもわかるからこそ、何も言えないまま月日だけが過ぎていた。
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