【BL】近くて遠い、遠くて近い。





大好きな人の唇は

少し冷たく、湿っていた。





生まれて初めての感触だった。





オレにとってのファーストキスを

全身で感じ取っていた。






あんなに焼きついていた中原さんの感触すら

たった一瞬で忘れるほどの

危険な刺激と熱。






ナオくんの体温が、

唇と手を通して伝わる。






頭がどうにかなりそうだ。






それほど長いわけでもない数秒間が

唇を離した後も続いている気がしていた。







「…はーーー…やば…」







顔なんてとても見れなかった。

それはナオくんも同じだったらしい。



まだ熱もったままの顔を、

互いの肩に埋めた。



大きく振動している心臓は

首元、指先、

足の裏まで痺れさせ震わせる。



顔が火照りすぎて

眼球がジンジンする。







「…もう、忘れた?」


「…………うん、」


「そっか、…よかった」








ナオくんは、優しく頭を撫でながら

静かにオレの目を見つめた。








「……お前…あっつw」


「……ごめん、緊張して、」


「大丈夫…?」


「うん…」







ナオくんだって、熱い。

きっと、同じ男にキスするのも

すごく勇気がいったと思う。



でも、それでも

キスしてくれるくらい、



オレのこと、好きでいてくれてるんやって



こんなオレでも、

そうやって赤くなって







「ヒイロは、俺のやから」







こんな近くでオレを見てくれて

優しく笑ってくれて







「さっきのことも、もう気にしてへんから」







背中をなぞるように手を回して

まるで服の上からオレの身体を試すように






「…ちょ、こそばゆい…、」


「…なぁ、」


「ん…?」


「別に…疑ってるわけちゃうんやけどさ」








耳元で切なく呟く彼は

とても愛おしかった。








「俺のこと、ほんまに好きって証拠が欲しい」







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