愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜



「本当だ。
パーティーの開始時間、もうすぐだもんね」

「だから手伝ってくれると嬉しいな」
「もちろんだよ」


お互い偽った状態で接しているから気味が悪いけれど。

これが私たちの通常運転である。

「なあ涼介、もしかして俺たちって邪魔?」
「えっ?どうして邪魔なの?」


段ボールの中に入ったオーナメントを手にしていると、瀬野と一緒にツリーの飾り付けをしていた男子が彼に話しかけていた。

なんとなく、嫌な予感がする。



「だって川上さんといい感じだろ?」
「俺たち完全に邪魔じゃん」


ほら、やっぱり。
沙彩の行動がきっかけで、また変な噂が流されかねない。



「あー、やっぱりそう見える?」

なんて、瀬野は瀬野で否定しない。
また面白がっているのだろうか。


「じゃあお幸せにな、涼介」
「聖なる日にビックカップル登場か〜いいなぁ」


待て、おかしい。

私たちは別に“慕っている”と口にした覚えはないし、実際慕っていない。


それなのにどうして付き合う前提なのかと。
意味がわからない、ダメだイライラする。

< 102 / 600 >

この作品をシェア

pagetop