愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「本当だ。
パーティーの開始時間、もうすぐだもんね」
「だから手伝ってくれると嬉しいな」
「もちろんだよ」
お互い偽った状態で接しているから気味が悪いけれど。
これが私たちの通常運転である。
「なあ涼介、もしかして俺たちって邪魔?」
「えっ?どうして邪魔なの?」
段ボールの中に入ったオーナメントを手にしていると、瀬野と一緒にツリーの飾り付けをしていた男子が彼に話しかけていた。
なんとなく、嫌な予感がする。
「だって川上さんといい感じだろ?」
「俺たち完全に邪魔じゃん」
ほら、やっぱり。
沙彩の行動がきっかけで、また変な噂が流されかねない。
「あー、やっぱりそう見える?」
なんて、瀬野は瀬野で否定しない。
また面白がっているのだろうか。
「じゃあお幸せにな、涼介」
「聖なる日にビックカップル登場か〜いいなぁ」
待て、おかしい。
私たちは別に“慕っている”と口にした覚えはないし、実際慕っていない。
それなのにどうして付き合う前提なのかと。
意味がわからない、ダメだイライラする。