愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「勝手に言わせておけばいいよ」
「…っ!?」
明らかに油断していた。
段ボールの中にあるオーナメントを手に取り、その場で固まっていると瀬野が隣にやってきたのだ。
「否定したら、余計に遊ばれるからね」
「私は気にしてないよ。むしろごめんね、誤解招いちゃって…沙彩にも後で言っておくから」
あくまで笑顔を崩さずに、瀬野に謝るけれど。
反省なんて一つもしていない。
「俺は別に平気だよ。
むしろラッキーなんて」
「…っ、み、見て見て瀬野くん!
このサンタさん、すごくかわいい」
「俺は川上さんの方がかわいいと思うけどな」
「こ、これをツリーに飾るんだよね!」
こいつは、どれほど私を乱したいのだ。
けれど私だって負けていられない。
「あっ、瀬野くん!
見て見て、サンタさんが揺れてる」
あどけないフリをして瀬野に笑いかける。
本当は楽しくなんてないけれど。
「本当にかわいいなぁ…」
「かわいいよね!
どんどんクリスマスらしくなってきたよ」
「…うん、そうだね」
瀬野の視線を感じる中、必死で笑顔を取り繕う。
本当に苦手なタイプである。
それでもツリーの飾り付けに集中して───