愛溺〜偽りは闇に堕ちて〜
「んー、クラスメイトに被害が及ばないように?」
「…そこに私は入ってないの?」
「大丈夫。巻き込んだからには、守り抜くから」
ふざけるなと言ってやりたい。
わざと巻き込ませたのだろう、私を。
もう抜け出せないようにって。
こいつのやることは本当に汚くて、ズルくて───
「…っ!?」
その時。
遠くから数台のバイクの走る音が聞こえてきて。
なんとなく嫌な予感がした。
その音が徐々に近づいているからだ。
「……ねぇ」
「お察しの通りだよ」
「なんでそんなに余裕なの!?
早く逃げ…」
「こうなることは初めからわかってたよ。はい、川上さんは俺の射程範囲にいてね。じゃないと守れないよ」
どうしてそんなにも嬉しそうなのだ。
笑っているのだ。
複数人に敵うとでも?
逃げる選択を求めようとしていると、バイクのヘッドライトが複数私たちを照らした。
最悪、私ってここで大怪我負うのではないか?
いや、 怪我というより襲われる覚悟も必要かもしれない。
それなのに瀬野は私を危険に晒したというの?
危機感を抱く中で、同時にイライラも募っていく。
「これはこれは、どこぞの“総長様”じゃないですか」
「……え」
目の前でバイク数台が止まり、先頭を走っていた男が降りたけれど。
そいつは今、なんと言った?