忍君のセカンドラブ~歳の差30歳以上~
「愛ちゃんが教えてくれたんだ。おじちゃんが、待ち合い室に置いて行ったって」
「何を言っているのか、僕には分らないなぁ」
スッと幸喜は茶色いハンカチを差し出した。
「これって、おじちゃんのハンカチだよね」
「さ、さぁ…知らないけど? 」
幸喜はハンカチを広げた。
「ここに、おじちゃんの名前が書いてあるよ」
ハンカチの隅に、ピンク色の糸でFUYUKIと縫われているのを指して幸喜が言った。
冬季は言葉に詰まってしまった。
「このハンカチは、本当の雪さんがおじちゃんにプレゼントしたハンカチじゃないの? 」
「それは…」
「このハンカチ。赤ちゃんが持ってたんだって。ずっと握っていたようだよ」
冬季はハッとなった。
「思い出した? 赤ちゃん置いた時の事」
青ざめた顔で、冬季は幸喜を見ている。
「おじちゃん。亡くなった人って、生きている人の幸せを願ているんだって。でも、亡くなった人の身代わりは望んでいないんだよ」
「身代わり…」
「うん。おじちゃん、お姉ちゃんの事。身代わりにしているって、後ろの女の人が言っているよ」
ギュッと拳を握りしめた冬季は、唇をかみしめた。
「おじちゃん。お姉ちゃんの事、ずっと探している人がいるんだよ」
「え? 」
「お姉ちゃんの事、心から好きな人がね。ずっと探しているんだよ」
「心から…好きな人? 」
「うん。だから、もうお姉ちゃんの事は自由にしてあげて」
フッと一息つき、冬季は苦笑いを浮かべた。
「自由にかぁ…」
少し悲しげな目で、冬季は空を見上げた。
「まるで天使のようだって、思ったんだよね。あの時…」
冬季はゆっくり話し始めた。