忍君のセカンドラブ~歳の差30歳以上~
「大丈夫だよ。君の名前は雪。上野雪だよ」
「雪? 」
「うん、そして僕の奥さん」
「貴方の…奥さん? 」
「そうだよ。どこも痛くない? 」
「は、はい…」
ホンギャーと赤ちゃんが泣きだした。
冬季は赤ちゃんを抱き上げた。
「この子は、どこの子供なんだろう? 」
「…さぁ…」
子供の事が分からない女性を見て、冬季は赤ちゃんをどこかに置いてくることを考えた。
とりあえず。
冬季は女性を車に乗せた。
そして赤ちゃんも乗せて走り出した。
夕刻時だったため、その日はそのまま女性を連れて帰宅した冬季。
帰宅後。
様子を見ていても特に、女性に大きな変化はなく、ただ記憶だけがない状態だったことから病院には連れて行かなかった。
その日は、そのまま眠った…。
そして翌日。
誰もまだ起きてこない夜明けに、冬季はこっそり宗田ホールディングの裏口から侵入した。
防犯カメラの死角を知っている冬季は、上手く死角を通り待合室へ向かった。
赤ちゃんを待合室に置いて、毛布を掛けた冬季は、そのまままた裏口から出て行った。
そのままそ知らぬふりをして、帰宅した冬季。
「君は上野雪。僕の奥さん。お仕事はスーパーのレジ打ちをしていたんだけと。ちょっと病気で、休んでいたんだよ。もう回復して、元気になったから心配しなくていいよ」
そう言って、冬季は女性を納得させ上野雪と名乗らせるようにした。
何もわからない女性は冬季の言う事を信じて、上野雪と名乗り、スーパーで働くようになった。
スーパーには事故で怪我をしていて、忘れていることが多いと事情を話し初めから教えてもらう事になった。
冬季は途中で何かも思い出して、雪がいなくなることが怖くて、送り迎えをしていた。
だが、雪が幸喜に会うようになり、幸喜が夏樹の子供であることに危険を感じ始め、実家に戻る決意をしたのだ
「…すごいね、君は。どうして見破ったの? 」
冬季が幸喜に尋ねた。
「お姉ちゃんに会った時、赤ちゃんと同じ感じがしたんだ。それに、おじちゃんが「僕の奥さん」って言った時。お姉ちゃん、よくわからな顔をしていたから。おじちゃんの後ろにいる、女の人が教えてくれて。やっぱりって、思ったから」
「そうだったのか…」