忍君のセカンドラブ~歳の差30歳以上~
「嘘ついてても、悲しいと思うよ。お姉ちゃん、いつも遠くを見ているからさっ」
「そうだな…」
冬季はちょっと観念したように頷いた。
その頃。
雪はいつものように、スーパーの仕事を終えて冬季の迎えを待っていた。
今日は幸喜が来ないなぁと、雪はちょっと辺りを見渡していた。
「こんにちは」
愛を抱っこした忍がやって来た。
「こんにちは…」
「今日は、お迎え遅いのですね」
「はい…」
何となく俯いていしまう雪。
「愛が、この前はとてもご機嫌で。家に帰っても、ずっと笑っていました」
「そうでしたか…」
忍はじっと雪を見つめている…。
「愛は…私の実の娘です」
「えっ…」
「愛は。私の会社の、待合室に置き去りにされていました。捜索願を出しましたが、見つかるまで私が預かる形をとりました。愛と一緒にいると、とても愛しくて。離れたくなくなってしまったので、違ってもいいと思いDNA鑑定をしてもらったのです。そうしたら、99%以上の確率で親子だと結果が出て。とても嬉しかったです」
パチッと愛が目を開けた。
そしてゆっくりと、雪を見た。
嬉しそうに笑いだす愛。
愛の声を聞くと、雪はハッと何かを感じたようだ。
「あの時…」
雪は冬季の車に引かれそうになった時の事を思い出した。
車に引かれそうになり、雪は倒れて頭を強く打った。
遠くから冬季の声が聞こえて、目を開けると。
頭が真っ白で何もわからない状態だった。
赤ちゃんの泣き声に、何か胸がズキンと痛みを感じたのを覚えている。
その後、赤ちゃんは知らない間にいくなっていた。
冬季が「赤ちゃんは、お母さんの元に帰ったよ」と言っていた。
だが、雪の中ではどこか引っかかっていた。
あの赤ちゃんは、冬季の赤ちゃんではなかったようだ。
あの場にいたのは雪と冬季しかいなかった。
だとすれば…
あの赤ちゃんは…。
雪はゆっくりと、愛を見た。
愛は嬉しそうに雪を見ている。