忍君のセカンドラブ~歳の差30歳以上~

(忍さん…好きです…)

 遠くでそう聞こえた雪。


(…私の、命がある限り幸せにするから…)


 遠くで男の人の声が聞こえた。


(愛しているよ…フェアディー…)


 フェアディーという名前が聞こえると、雪はハッとなった。


「どうかしましたか? 」


 忍が心配そうに尋ねると。


 その声と、聞こえてきた男の人の声が同じであることに雪は気づいた



「…忍…さん…」


 雪は忍を見つめた…。

 見ていると…確かに見覚えがる…。

 そして胸が熱くなる…。


「あの…。もしかして、頭を怪我した事ありますか? 」

「え? 」

「いえ、今、私の頭が痛みを感じたのです。とても強い痛みを…なので、もしかして怪我をされたことがあるのかと思ったので」


「怪我ではありませんが。車に引かれそうになり、頭を強く打ったことがあります。少し前に…」

「そうでしたか。今は、もう大丈夫なのですか? 」


 雪はそっと首を振った。


「…私…。本当は、何も分からないのです」

「分からない? どうゆうことなのですか? 」


「自分の名前も、何も分からなくなってしまって…」

「え? 記憶喪失ですか? 」

「記憶喪失? それは、自分の事も忘れてしまう事ですか? 」


 ピキーンと、忍の頭に痛みが走り、黒い車が見えてきた。

 黒い車に引かれそうになる雪。

 その時の雪は、小さな赤ちゃんを抱いていた。

 車に引かれそうになった雪は、弾みで近くの壁に頭をぶつけたようだ。

 そのまま倒れてしまった雪。

 赤ちゃんは雪の腕の中で泣いていた…。



 痛みが治まり、忍はもう一度、雪を見た。


 マスクをつけている雪だが。

 目を見ると、フェアディーと重なって見えた。


「まさか…」


 愛が雪を見て喜んでいるのは…
 もしかして、雪が本当の母親だからか?
 そうだとしたら…


 雪を見つめていると、忍の胸の中で愛しさが込みあがってきた。

< 41 / 47 >

この作品をシェア

pagetop