忍君のセカンドラブ~歳の差30歳以上~
(忍さん…好きです…)
遠くでそう聞こえた雪。
(…私の、命がある限り幸せにするから…)
遠くで男の人の声が聞こえた。
(愛しているよ…フェアディー…)
フェアディーという名前が聞こえると、雪はハッとなった。
「どうかしましたか? 」
忍が心配そうに尋ねると。
その声と、聞こえてきた男の人の声が同じであることに雪は気づいた
「…忍…さん…」
雪は忍を見つめた…。
見ていると…確かに見覚えがる…。
そして胸が熱くなる…。
「あの…。もしかして、頭を怪我した事ありますか? 」
「え? 」
「いえ、今、私の頭が痛みを感じたのです。とても強い痛みを…なので、もしかして怪我をされたことがあるのかと思ったので」
「怪我ではありませんが。車に引かれそうになり、頭を強く打ったことがあります。少し前に…」
「そうでしたか。今は、もう大丈夫なのですか? 」
雪はそっと首を振った。
「…私…。本当は、何も分からないのです」
「分からない? どうゆうことなのですか? 」
「自分の名前も、何も分からなくなってしまって…」
「え? 記憶喪失ですか? 」
「記憶喪失? それは、自分の事も忘れてしまう事ですか? 」
ピキーンと、忍の頭に痛みが走り、黒い車が見えてきた。
黒い車に引かれそうになる雪。
その時の雪は、小さな赤ちゃんを抱いていた。
車に引かれそうになった雪は、弾みで近くの壁に頭をぶつけたようだ。
そのまま倒れてしまった雪。
赤ちゃんは雪の腕の中で泣いていた…。
痛みが治まり、忍はもう一度、雪を見た。
マスクをつけている雪だが。
目を見ると、フェアディーと重なって見えた。
「まさか…」
愛が雪を見て喜んでいるのは…
もしかして、雪が本当の母親だからか?
そうだとしたら…
雪を見つめていると、忍の胸の中で愛しさが込みあがってきた。