お嬢様と呼ばないで

12 腐ったみかん



「ただいま」

「ちーす」

「……おお。おかえり、ってなんじゃお前まで!」


当たり前のように自宅にやって来た疾風に岩鉄はびっくりしたが、幼い頃から知っている小僧の彼から話を今日の聞きたかったので美友が自室に行った途端、話をし出した。


「疾風よ!あれはナイスピッチングだったな……」


「何を言っているんだよ?俺達、めちゃくちゃ大変だったんだぞ」


風呂上りの浴衣姿の爺さんのドヤ顔に彼は呆れた顔をした。


そんな岩鉄は美友が学校一番の悪と保健室でケンカしたという疾風の話を、目を瞑り腕を組んで話を聞いていた。


「聞いてんのかよ!」

「聞いとるわい!目がかゆいんじゃ!」


そういって岩鉄は目薬を挿そうとしたが、全然入らないので、見かねた疾風がドボドボ挿してやった。



「あのな?相手は『ふくよか先輩』って言ってたぞ……」

「ぐえ?口に入った?そ、それは福岡の誤りだ!人権侵害にならんかの」


岩鉄の話では、野球をしていた彼は怪我でできなくなり腐ってしまったと話した。


「あやつは親御さんもサジを投げている男じゃ。まあ、これで良いか」

「は?」


美友と喧嘩をした理由で学校を退学させる理由ができたと彼は黒く微笑んだ。


「でも、そんな事をしたら。美友が傷つくだろうよ」

「うるさいわ!他の生徒に危害を加えてからでは遅い。腐ったみかんがあれば他のみかんも腐ってしまうんじゃ」
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