……秘密があります
「いえ、そんなっ。
 課長にやっていただくとか、とんでもないですっ」
と羽未は言う。

 確かに人に見られたら、羽未が何様な感じになってしまうな。

 あるいは、仕事のできない奴だと思ってしまわれるかも。

 帯刀は振り返り、ドアを閉めた。

 閉めたら二人きりの密室だな、とちょっとどきりとしたが。

 ……いや、二人と一匹の密室だな、と気づいて、ゾッとする。

 急ごう、とチャカチャカ帯刀は棚に湯飲みを片付けるのを手伝った。

「す、すみません。
 ありがとうございます」
と羽未は恐縮するが、帯刀は極自然に、

「いや、結婚したら、こういう機会もあるだろう。
 お前だけに家事を押し付けるつもりはないし」
と言っていた。

 ……ありがとうございます、と赤くなって羽未が俯く。

 おや?
 蜘蛛の恐怖により、なにかを振り切っているので、いつもなら照れることもスッと口に出せるようだ。

 今なら、キスとか出来るのではっ!?
と思ったとき、そいつは現れた。
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