……秘密があります
 は? と羽未が顔を上げたとき、そいつはすでに流しの上に居た。

 ひいいいいいっと二人で壁に張り付く。

 いつの間にか手を握り合っていた。

 そして、二人同時に壁を振り向く。

 なんだか壁にも同じものが居そうな気がしたのだ。

 ……ネズミ算式に増えているかもしれん。

 蜘蛛だが、とちょっと混乱した頭で思いながらも、

「羽未、外に出ろ。
 俺がなんとかする」
と言うと、羽未は、

「い、いえ。
 課長にお任せするわけには。

 っていうか、課長はもしや、蜘蛛がお嫌いでは?」
と訊いてきた。

 素直に嫌いと言えばよかったのだろうが。

 さっき、羽未が蜘蛛をどうにかしてくれる人と結婚したい、と言っていたのを聞いていた。
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