……秘密があります
「いや、そんなことはない」
と壁に張り付き、羽未の手を握った状態で言う。

 そのとき、蜘蛛が流しの上で軽やかに跳んだ。

 ぎゃーっ!
と二人で悲鳴を上げる。

「……あの。
 課長、蜘蛛、苦手ですよね?」
と今度は確信を持って羽未が訊いてきた。

「いや」

 ヤバイ。
 疑いを晴らさねば、と思った帯刀は、
「蜘蛛は苦手ではない。
 だが、外に出してやることはできない。

 蜘蛛とは友だちだから」
とよくわからないことを言ってしまう。

「そ、そうなのですか。
 でもこのままでは、湯飲みの中に蜘蛛が入ってしまいそうです」
とまだ流しに残っていた湯飲みを羽未が見る。

「あの、そこの新聞紙にでも乗せてくださったら、私が外に出しますから」

 新聞紙に乗せるっ!?
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