……秘密があります
 っていうか、そもそも新聞紙が蜘蛛とそう離れていないゴミ箱に丸めてさしてあるのだがっ。

 もうちょっと距離を置きたい気分なんだが、と、
「何故、友だちと距離を置きたいのですか……?」
と羽未に突っ込まれそうなことを思う。

「い、行くぞっ」

「はいっ!」

 帯刀はなんとか新聞を手にし、蜘蛛に近づける。

 羽未が、
「課長、ありがとうございますっ」
と言いながら、ぴったり背中に張り付いてきて、背中はものすごく幸せを感じていたが、顔面は恐怖で真っ青になっていた。

 なにせ、こいつは跳ぶからなっ!

 そんなことを考えている間も、かさかさと蜘蛛は新聞紙から逃げていく。

「何故、逃げる。
 外に出してやろうと言うのに……」
と帯刀は低く呟いたが、蜘蛛からしてみれば、

 何故、出す。
 暑さ寒さが紛れる建物の中に居たいのに……と言いたいところだろう。
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