……秘密があります
 我々のこのマヌケな会話が、きっともう中まで筒抜けている。

「だがまあ、妖怪送り狼も家までちゃんと送ってくれることもあるらしいしな」
と自らの失態をごまかそうとするように帯刀は言う。

 いや……、妖怪はもういいです、と羽未が思ったとき、声がした。

「送り狼がなんで家まで送ってきてるんだ」

 士郎だった。

 今、自宅の駐車場から出てきたようだ。

「まあいい。
 お前たちに話がある」
と士郎は言う。

「ちょっと羽未の部屋で話そうか」

「……何故、私の部屋」
と羽未は呟いたが、

「まあまあ、課長さんっ」
と出てきた母親に強引に帯刀が家へと引き込まれた。

 妖怪送り狼からは逃げられても、この妖怪からは逃げられそうにない。

 結局、羽未の部屋で話すことになった。







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