君のキスが狂わせるから
 結局この日、私は遅い電車に乗ることができたので、タクシーを使うこともなく帰宅することができた。
 食事をして帰ろうと誘われたけれど、そうしてしまったら本当に帰れなくなってしまう。

「残念だけど、今日は帰るね」
「そうですか……じゃ、また改めて誘います」
「うん」

(これ、社交辞令じゃないといいなあ)

 途中まで各停の新宿行きに乗り込むと、行きとは打って変わってガラガラだった。
 私たちは深瀬くんが下車する藤沢駅に着くまで黙って揺られていた。
 行きの時に感じたドキドキはまだ当然残っているけれど、それはさらなる甘さを伴って優しく私を癒してくれた。
< 17 / 66 >

この作品をシェア

pagetop