君のキスが狂わせるから
7年ほど前。
大口の取引先であるオークラの会長が亡くなったという知らせを聞き、私は会社の代表として葬儀に参列した。
そこで、どうやら当時高校生だった深瀬くんに会っていたらしい。
「皆が儀礼的な挨拶で淡々と頭を下げて帰っていく中、一人だけずっと葬儀場の外で空を見上げて泣いている女性がいたんです」
(あ……確かにそれ……私だ)
深瀬くんは知らないかもしれないが、私はオークラの会長さんと何度か会社でお会いしたことがあり、その際とても優しい言葉をかけてもらったのを覚えていたのだ。
「個人的に私、深瀬くんのお爺さま…大倉会長を素敵な方だと思っていたから。それで、すぐに帰る気持ちにもなれなくて……しばらく空へ昇っていかれる会長とお話ししてたの」
(変だと思うよね。私、親族でもないのに……長々とあんなところに立っていて)
「俺はてっきり祖父に愛人でもいたのかと思ったんですが」
「えっ」
「いえ、それは誤解だとすぐ分かりましたから。心配しないでください」
苦笑しながら、彼は私の頰にそっと手を置いた。
伝わってくる温もりに鼓動がバクバクと音を立て始める。
(なん…で、急にそんな大人っぽい笑い方するの)
顔が熱くなる中、彼は私から視線を離さずに話を進めた。
「取引先の会社の方だって知って、俺……驚いたし、すごく感動したんです。祖父のことは尊敬していて、とてもショックで落ち込んでいたから。だから……あの時のあなたが、とても綺麗に見えて……多分一目惚れしたんです」
こんな熱のある告白はされたことがない。
若いから、だから突っ走ってるんでしょう。
そう冷静な自分なら気づくのかもしれない。
でも、この時の私はただ目の前の愛おしい存在を受け入れたくて仕方なくなっていた。
「ミホ先生のことは?」
前置きなく尋ねたけれど、深瀬くんは驚きもせずに「好きだった」と頷いた。
「ただ、今はあなたが好きです。一度振られても、結局……諦めきれませんでした」
「そんなの……恋人と別れてしまったから、錯覚してるの……かもしれないでしょ」
抵抗のつもりで告げた私の声は、空気に溶けてしまいそうなほど小さくて説得力のないものだった。
「だったら今、こうしてあなたの顔を見ながら、抱きしめたい…って感じてるのも錯覚だっていうんですか? これは俺の感情です、あなたのものじゃない」
するりと滑った指の刺激に肩がびくりと震える。
落ち着いていた体温も再び上昇するのがわかり、呼吸も深くは吸えない。
私の反応を楽しむように彼は指先で唇を撫で、耳にキスした。
「……な…っ?」
「ふふ、真っ赤ですね。そんな反応されると、余計煽られるんですけど」
「あ、煽ってなんかないよ」
否定しようとするけれど、顔が真っ赤になっているのも自分でわかる。
「俺、だめだな……この前嫌われかけたばっかなのに」
深瀬くんはネクタイをシュルッと外しながら、エレベーターで見せたような妖艶な笑みを見せた。
「体調完全に戻ってないと思いますから……手加減しますよ」
大口の取引先であるオークラの会長が亡くなったという知らせを聞き、私は会社の代表として葬儀に参列した。
そこで、どうやら当時高校生だった深瀬くんに会っていたらしい。
「皆が儀礼的な挨拶で淡々と頭を下げて帰っていく中、一人だけずっと葬儀場の外で空を見上げて泣いている女性がいたんです」
(あ……確かにそれ……私だ)
深瀬くんは知らないかもしれないが、私はオークラの会長さんと何度か会社でお会いしたことがあり、その際とても優しい言葉をかけてもらったのを覚えていたのだ。
「個人的に私、深瀬くんのお爺さま…大倉会長を素敵な方だと思っていたから。それで、すぐに帰る気持ちにもなれなくて……しばらく空へ昇っていかれる会長とお話ししてたの」
(変だと思うよね。私、親族でもないのに……長々とあんなところに立っていて)
「俺はてっきり祖父に愛人でもいたのかと思ったんですが」
「えっ」
「いえ、それは誤解だとすぐ分かりましたから。心配しないでください」
苦笑しながら、彼は私の頰にそっと手を置いた。
伝わってくる温もりに鼓動がバクバクと音を立て始める。
(なん…で、急にそんな大人っぽい笑い方するの)
顔が熱くなる中、彼は私から視線を離さずに話を進めた。
「取引先の会社の方だって知って、俺……驚いたし、すごく感動したんです。祖父のことは尊敬していて、とてもショックで落ち込んでいたから。だから……あの時のあなたが、とても綺麗に見えて……多分一目惚れしたんです」
こんな熱のある告白はされたことがない。
若いから、だから突っ走ってるんでしょう。
そう冷静な自分なら気づくのかもしれない。
でも、この時の私はただ目の前の愛おしい存在を受け入れたくて仕方なくなっていた。
「ミホ先生のことは?」
前置きなく尋ねたけれど、深瀬くんは驚きもせずに「好きだった」と頷いた。
「ただ、今はあなたが好きです。一度振られても、結局……諦めきれませんでした」
「そんなの……恋人と別れてしまったから、錯覚してるの……かもしれないでしょ」
抵抗のつもりで告げた私の声は、空気に溶けてしまいそうなほど小さくて説得力のないものだった。
「だったら今、こうしてあなたの顔を見ながら、抱きしめたい…って感じてるのも錯覚だっていうんですか? これは俺の感情です、あなたのものじゃない」
するりと滑った指の刺激に肩がびくりと震える。
落ち着いていた体温も再び上昇するのがわかり、呼吸も深くは吸えない。
私の反応を楽しむように彼は指先で唇を撫で、耳にキスした。
「……な…っ?」
「ふふ、真っ赤ですね。そんな反応されると、余計煽られるんですけど」
「あ、煽ってなんかないよ」
否定しようとするけれど、顔が真っ赤になっているのも自分でわかる。
「俺、だめだな……この前嫌われかけたばっかなのに」
深瀬くんはネクタイをシュルッと外しながら、エレベーターで見せたような妖艶な笑みを見せた。
「体調完全に戻ってないと思いますから……手加減しますよ」