私立秀麗華美学園
まだ動悸がおさまらないならしい咲は、噴水によろよろと腰かけた。


「……で、何やったん、やろ……」

「惚れられちゃったのねー」


ゆうかは言いながら、やはり楽しそうに、咲の頭を撫でた。
全く、兄弟揃って嫌な奴らだ。笠井兄弟。


「でもやっぱり、さすがの雄吾ね」

「和人かて、よう気づいたなあ。さすが9年来のつきあいやんな」


木の棒を探してくるという犬のような役目だった気もするけどな。


「な、雄吾?」

「え? あ、ああ……」


雄吾の顔を覗き込んだ咲は首を傾げた。
一見普段と変わりはないが、何となく上の空のようである。


「でも、どうする? 絶対また絡まれるわよね」

「んー、もうなんか、むかついてきたし、大丈夫。今度来たら張り倒したるから!」


そう言ってすっくと立ち上がった咲には、いつものテンションと笑顔が戻っていた。

咲がここまで言うなら心配ないだろう、と俺が思ったぐらいだから、当然雄吾も同じように思っただろうと考えていたのだが。


「無茶は、するなよ……」


雄吾の口から飛び出した言葉は、多少意外なものであった。

呟き、雄吾はひとりで噴水を後にした。足は校舎と違う方向に向いている。


「なんか、変ね……」


俺も咲も、一番一緒にいる時間の少ないゆうかでさえも、雄吾の態度から違和感を感じ取り、戸惑っていた。
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